確率母関数・積率母関数の使い道

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こんばんは。

昨日に引き続き、統計学の話です。

統計学の勉強をしていると、「確率母関数」や「積率母関数」というものが突然登場します。前者は離散型、後者は連続型の確率分布に定義されます。

しかし、最初にこの概念を知ったときはイマイチ使い道がわかりませんでした。

任意次数の原点周りモーメントを求めたいときに使ったり、確率を求めたりはできるのですが、別にわざわざこんな面倒な概念を持ち出す必要は無いのでは? と思っていました。

今も完全に分かっているわけではないのですが、一つ便利な使い方を紹介します。

確率母関数を使って再生性を確認

非負整数値をとる離散型確率変数Xの分布に対して、確率母関数は以下のように定義されます。

離散型確率変数XとYが独立とします。このとき、確率変数X+Yの分布の確率母関数は

となります。途中で、XとYが独立⇒E[f(X)g(Y)]=E[f(X)]E[g(Y)]を利用しました。

つまり、XとYが独立のとき、X+Yの分布の母関数はそれぞれの母関数の積になります。

さらに、XとYが独立に"同じ分布"に従うとき、X+Yの分布の母関数は、元の母関数の二乗になります。

この事実が有用なのです。

さらに、母関数について、「2つの分布の母関数が一致すれば、2つの分布は全く同じ分布である」という定理が知られています(証明は難しいみたいです)。分布と母関数は一対一対応するということです。

これも重要な事実です。

さて、ここで、ベルヌーイ分布Ber(p)の確率母関数を見てみましょう。

Ber(p)は、成功確率がpの試行(ベルヌーイ試行と言います)を1回行い、成功すれば1、失敗すれば0を取る、というような分布です。

P(1)=p, P(0)=1-p, その他のnでP(n)=0なので、母関数は

となります。(Gの中身のセミコロン以降は分布のパラメータです)

では、次に二項分布B(n,p)の母関数を考えましょう。

ここで母関数が役に立ちます。

二項分布は、成功確率pのベルヌーイ試行をn回行ったときの成功回数の分布であり、互いに独立なX_i~Ber(p)(i=1,2,...,n)に対して

で表される確率変数Xの従う分布が二項分布B(n,p)です。

したがって、その母関数は、Ber(p)の母関数のn乗となり、

になります。お手軽!

また、互いに独立なX~B(n_1,p)、Y~B(n_2,p)があるとき、その和の母関数は

となり、これはB(n_1+n_2,p)の母関数に等しいので、X+YはB(n_1+n_2,p)に従うことが分かります。独立に二項分布に従う確率変数の和もまた、二項分布に従うのですね。

これを、「二項分布は再生性を持つ」と言います。

積率母関数も同様

連続型確率変数Xの従う分布の確率密度関数f(x)に対して、積率母関数は以下のように定義されます。

確率母関数と同様に、独立な確率変数X,Yに対して、それぞれの従う分布の積率母関数をM_X(t)、M_Y(t)とすると、以下が成り立ちます。

さらに、積率母関数と連続型確率分布にも「母関数の一意性」は成り立ちます。積率母関数と分布は一対一対応しています。

では、正規分布の積率母関数を求めてみましょう。

長くなりましたが、最後の変形には、正規分布N(μ+σ^2*t, σ^2)の確率密度関数の(-∞,∞)での積分が1になることを利用しています。

この分布の形から、

より、正規分布も再生性を持つことが分かります(独立に正規分布に従う確率変数X,Yの和は、平均と分散がともにX,Yの平均・分散の和であるような正規分布に従う)。

正規分布の再生性は平均値の分布などを考察する際にも必要な概念であり、重要ですね。

再生性という、確率分布の重要な性質があるかどうかを、母関数を見るだけで知ることができます。さらに、形を見れば二項分布B(n,p1)とB(n,p2)(nが共通)の間には再生性が成立しないことも分かります。

各種の分布と再生性

ポアソン分布Po(λ)の確率母関数は

となり、指数部分がλの一次式で底部分がλに依らないので、ポアソン分布は再生性を持ちます。

負の二項分布NB(r,p)の確率母関数は

となり、負の二項分布はパラメータrについて再生性を持ちます。

ガンマ分布の積率母関数は、

となし、ガンマ分布はαについて再生性を持ちます。

など、様々な分布に対して、再生性を持つことが母関数の形から判断されます。(再生性を持たない分布の母関数は複雑になったり有用でなかったりすることが多いようです)

以上、確率母関数と積率母関数の、確率・積率を求める以外の用途の紹介でした。

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