滑舌トレーニング 外郎売

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こんばんは。

最近、日本語の発音シリーズみたいなものを書いてきましたが、今回はちょっと趣向を変えて、滑舌の話をしてみます。

喋る活動をしている人や、喋る活動をしようとしている人にとって、滑舌を良くするというのは必須課題です。

特に喋る活動をするわけでなくとも、日常生活において、自分の滑舌が良くなくて困ったことがある人もいるかもしれません。

ということで、今回は滑舌について書きたいと思います。

とは言っても、今回は外郎売という滑舌トレーニングの紹介だけで、滑舌を良くする方法みたいな話にはたどり着けないと思います。

ちなみに私は滑舌の専門知識はありませんが(滑舌の専門知識ってなんだ?)、「きゃりーぱみゅぱみゅ」を噛んだことが無かったり、「神アニメ」を高速で10回言えたりと、それなりに滑舌に自信があります。

もちろん音声学の知識はあるので、その知識がかなり役に立っています。というか音声学の知識=滑舌の専門知識、でいいのでは?

声優やアナウンサーの練習の定番「外郎売」

さて、細かい内容に入る前に、タイトルに書いてある「外郎売」を紹介します。

読み方は「ういろううり」です。外郎というのはお菓子のことではなく薬のことです。

外郎売というのは歌舞伎の演目?の一つなのですが、その中で外郎(ういろう)という薬を売るを売る薬商人が外郎の宣伝をする長ゼリフがあり、さらにその中に早口言葉がたくさんあるので、声優、俳優、ナレーター、アナウンサーなどの練習としてよく使われるのです。

声優やアナウンサーの非常に多くの人が通る道です。通らない方が珍しいです。(通らない人ももちろんいますが)

セリフ全文は調べれば色々見つかります。

http://www.geocities.jp/actartcreator/shiryoushitzu/uirouuri-honbun.html

とか

https://ja.wikisource.org/wiki/%E5%A4%96%E9%83%8E%E5%A3%B2

とか。

Youtubeで調べてみても、色々な朗詠動画が見つかります。

ただし、出典によって読み仮名や言い回しが微妙に違っています。好きなものを、できれば言いにくそうなものを使用すると良いでしょう。

以下、現代語訳については「「外郎売」のせりふの全訳です」のWebページを参考にしています。

早口言葉も出てきますが、最初は、腹から声を出して大きく口を開けて、ゆっくりはっきり発音する練習をしましょう。勘違いしたり変な癖のまま早口の練習をするのはよくありません。

さて、出だしは

拙者親方と申すは、お立ち会いの中(うち)に、御存知のお方も御座りましょうが、

御江戸(おえど)を発(た)って二十里上方(かみがた)、相州(そうしゅう)小田原一色町(いっしきまち)をお過ぎなされて、

青物町(あおものちょう)を登りへおいでなさるれば、

欄干橋虎屋(とらや)藤衛門(とうえもん)、只今は剃髪(ていはつ)致して、円斎(えんさい)となのりまする。

というものです。

「拙者」は自分のことですが、「親方」は自分ではありません。自分の親方という立場にある人のことです。以降は、親方の紹介です。

ここからしばらく親方と店の素晴らしさを紹介するセリフが続きます。薬の信頼性とかを高めるためです。

少し飛ばして、次の文があります

イヤ最前(さいぜん)より家名(かめい)の自慢ばかり申しても、

御存知ない方には、正身(しょうしん)の胡椒の丸呑み、白河夜船、

さらば一粒(いちりゅう)食べかけて、その気(き)見合(みあ)いをお目にかけましょう。

「店の自慢はこの辺にして、薬の効き目をお見せしましょう」みたいな感じです。

薬の効き目の説明に、

さて、この薬、第一の奇妙には、舌のまわることが、銭ゴマがはだしで逃げる。

ひょっと舌がまわり出すと、矢も盾もたまらぬじゃ。

そりゃそら、そらそりゃ、まわってきたわ、まわってくるわ。

アワヤ喉(のんど)、サタラナ舌(ぜつ)にカ牙(げ)サ歯音(しおん)、ハマの二つは唇の軽重(けいちょう)、

開合(かいごう)さわやかに、あかさたなはまやらわ、おこそとのほもよろを、

とあります。「奇妙」は変なことではなく「素晴らしいこと」です。

「この薬の素晴らしいことは、舌が良く回るようになることです」という意味。「銭ゴマがはだしで逃げる」とは、当時の遊びで「銭で作ったコマを回して、止まるまでに浄瑠璃とかを言いきる」という遊びについて、この薬を飲むと銭ゴマに余裕で勝てる、ということです。

「アワヤ喉、アタラナ舌にカ牙サ歯音、ハマの二つは唇の軽重」というのは、アカサタナハマヤラワのすべての発音の説明です。

「ア・ワ・ヤ行の喉音、サ・タ・ラ・ナ行の舌音、カ行の牙音、サ行の歯音、ハ行とマ行は唇を軽く閉じるか、しっかり閉じるか、というような発音すべて、」という意味です。(喉音とか舌音とかは中国音韻学の用語だそうです。)

「全ての発音が、口の開け閉めもはっきりとなり、あかさたなはまやらわ、……が綺麗に言える」という感じです。

さて、次からついに「薬のおかげで滑舌良くなるアピール」として早口言葉が大量に登場します。

途中までですが、長めに抜粋します。

一つへぎへぎに、へぎほしはじかみ、

盆まめ、盆米(ぼんごめ)、盆ごぼう、摘蓼(つみたで)、摘豆、つみ山椒(ざんしょう)、

書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)、

粉米(こごめ)のなまがみ、粉米(こごめ)のなまがみ、こん粉米(こごめ)の小生(こなま)がみ、

繻子(しゅす)・緋繻子(ひじゅす)、繻子(しゅす)・繻珍(しゅちん)、

親も嘉兵衛、子も嘉兵衛、親かへい子かへい、子かへい親かへい、

古栗(ふるぐり)の木の古切口(ふるきりぐち)。

雨合羽か、番合羽か、貴様のきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、

我等がきゃはんも皮脚絆(かわぎゃはん)、

しっかわ袴(ばかま)のしっぽころびを、

三針(みはり)はりなかにちょと縫うて、ぬうてちょとぶんだせ、

かわら撫子(なでしこ)、野石竹(のせきちく)。

のら如来、のら如来、三のら如来に六のら如来。

一寸(いっすん)先のお小仏におけつまずきゃるな、

細溝(ほそみぞ)にどじょにょろり。

京の生鱈(なまだら)、奈良生(なま)学鰹(まながつお)、ちょと四、五貫目(しごかんめ)、

お茶立(だ)ちょ、茶立(だ)ちょ、ちゃっと立(た)ちょ、茶立(だ)ちょ、青竹(あおだけ)茶せんでお茶ちゃっと立(た)ちゃ。

来(く)るは来(く)るは何が来(く)る、高野の山のおこけら小僧。

狸百匹、箸百膳、天目(てんもく)百杯(ひゃっぱい)、棒八百本(はっぴゃっぽん)。

武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ。

菊、栗、きく、くり、三菊栗、合わせて菊栗六菊栗、

麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ。

あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀(ながなぎなた)ぞ。

向こうの胡麻がらは、荏(え)の胡麻がらか、あれこそほんの真胡麻殻(まごまがら)。

怒涛の早口言葉。難しいと思うポイントを上げます。発音上の注意点も。

盆まめ、盆米(ぼんごめ)、盆ごぼう

「まめぼ」で両唇音(上下の唇がぴったりくっつく子音)が3連発です。筋肉を使って意識的に唇をしっかり動かそうとしなければ、綺麗に速く発音できません。

「盆ごぼう」自体は難しくないのですが、前二つのあとだとなぜか「ぼんぼ」と言ってしまいそうになります。要注意。

鼻濁音については確定的ではありませんが、「ぼんごめ」の「ご」は鼻濁音、「ぼんごぼう」の「ご」は普通の濁音にする説が多いようです。

鼻濁音のルールについてはまた別の記事でまとめますが、「単語の頭は普通の濁音、語中・語尾は鼻濁音」という基本ルールがあり、「盆米」は一つの単語で「盆ごぼう」は「盆+ごぼう」であると考えられやすいということでしょう。

書写山(しょしゃざん)の社僧正(しゃそうじょう)

多分最難関。

脳内で入念にイメージトレーニングしましょう。

実際、早口言葉にイメージトレーニングは有効だと思います。頭の中で「きゃりーぱみゅぱみゅ」と言おうとすると、噛みそうになりませんか?脳内で言えるようになると実際にも言いやすくなります。たぶん。

「しゃ」の箇所でしっかりと口を横に引っ張る(口角を上げる)イメージで、オーバーに口を動かしましょう。

雨合羽か、番合羽か

「番合羽」で「ばんば」とならないようにしましょう。「ばんがっぱ」です。

「ぱかばんが」を一続きで言おうとすると言いやすくなると思います。それで良いのかという気もしますが。

区切れ目を変えると言いやすくなる早口言葉はよくあります。「神アニメ」を高速で10回言うときに、「かみあ・にめ」と考えると言いやすくなりました。

また、「が」は両方とも鼻濁音です。語中ですね。

一寸(いっすん)先のお小仏におけつまずきゃるな

「おこぼとけ」と「おけつまずきゃるな」が普段言わない言葉なので最初は引っかかりやすいです。

「おこぼとけ」は「おことぼけ」にならないように。

「おけつまずきゃるな」は「おけつま・ずきゃるな」と分けると4拍ずつになるので言いやすくなると思います。

京の生鱈(なまだら)、奈良生(なま)学鰹(まながつお)

奈良のあとの「なままな」に注意です。両唇音が2連続。筋肉を使って意識的にしっかり唇を動かしましょう。

武具、馬具、ぶぐ、ばぐ、三ぶぐばぐ、合わせて武具、馬具、六ぶぐばぐ

これも両唇音2連続が2箇所あります。「みぶ」「むぶ」です。そこに集中すれば大丈夫です。

「ぐ」は全て語尾なので鼻濁音になりますが、鼻濁音が大量にあると発音しにくい、ということであれば普通の濁音で妥協するのも手ではあります。滑舌は悪く聞こえがちですが、鼻濁音でこんがらがるよりはマシです。

ただし、本来は全て鼻濁音なので、全て鼻濁音で早く言う鼻濁音トレーニングをするのも良いと思います。

菊、栗、きく、くり、三菊栗、合わせて菊栗六菊栗

「きくく」で軟口蓋音(舌の中央部~後部が軟口蓋(上あご中部~後部)にくっつく音)が3連続ですね。(「き・く」は軟口蓋音ですが、調音点(舌が触れる場所)は「か・こ」よりも前になります)

「きくく」の真ん中の「く」は無声化します。させなくても結構ですが、無声化させるとより発音しやすくなるかもしれません。(日本語として正しいのは無声化する方です。)

麦、ごみ、むぎ、ごみ、三むぎごみ、合わせてむぎ、ごみ、六むぎごみ

「みむ」で両唇音2連発。「みみむ」「みむむ」では3連発です。頑張りましょう。

「むぎ」の「ぎ」は語尾なので鼻濁音ですが、「ごみ」の「ご」は語頭なので普通の濁音です。ややこしいですね。しっかり意識しましょう。

あの長押(なげし)の長薙刀(ながなぎなた)は、誰(た)が長薙刀(ながなぎなた)ぞ

後半の「たがながなぎなたぞ」が特に難しいです。「たがなが・なぎなた」と区切ると言いやすくなると思います。

「なた」で歯茎音(舌の縁が歯の付け根あたりにぴったりくっつく音)が2連続です。何度も言って慣れましょう。

「げ、が、ぎ」は全て鼻濁音です。難しいかもしれませんが、しっかり意識して練習しましょう。

以上が外郎売の、滑舌トレーニングとしての解説です。この後も結構あって最後に「ういろうはいらっしゃりませぬか(ういろうはいかがですか)」と言って終わりです。

上記の早口言葉部分以外は特に目立った特徴はありませんが、せっかくなので朗読のトレーニングにでもどうでしょうか。

早口言葉部分の前後はスラスラと軽く抑揚を付けながら読み(鼻濁音や無声化についても可能ならば調べて意識する)、早口言葉部分は、はっきり正しく発音できる限りの最高スピードで読む、というようなトレーニングが良いと思います。

出だしゆっくりだと早口言葉でスピードを出せないので、やりたければ最初からトップスピードで時間計測してやってみるのもいいかもしれません。ただし、あくまで「正しく発音できる」限りの最高スピードで(ちょっとオーバーして失敗してみるのも苦手箇所の発見になって良いですが)。

もちろん、録音して聞いてみるというのが非常に効果的だと思います。早口部分はスロー再生できるようなソフトで聞けるといいですね。

さて、次回になるかもっと先になるか分かりませんが、滑舌を良くするにはどうすればいいのか、みたいな考察記事も書いてみたいと思います。

思いますが、私自信そんなに滑舌トレーニングをしたわけではないので、音声学の基本(気流機構とか調音点とか)中心になりそうです。あとは練習法とか早口言葉のコツとか。コツはもう今回ある程度書きましたが。

鼻濁音と無声化のルールもちゃんとまとめた記事を書きたいですね。

では、今日はこの辺で。

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