お久しぶりです。ふるやん(@furuya1223)です。
すっかり競技プログラミングから離れてしまい、ブログ更新が途絶えていましたが元気です。
タイトルにもある通り、令和4年度第3回の漢字検定1級に合格しました。
点数は164点でした。あと5点以上落としていれば不合格です。危ない。いや、4点許容なら意外と危なくないのかもしれない。
ともあれ、漢検1級チャレンジャー(初合格を狙う人)は卒業となり、リピーターの仲間入りです。よろしくお願いします。
本記事では、漢検を受けない人でも読める内容として、漢検1級の紹介や合格に至る道のりなどを紹介します。
漢検1級チャレンジャー向けに、自分の勉強法とおすすめの勉強法を紹介する記事は別で投稿したので、チャレンジャーの方はそちらもぜひ御覧ください。
漢検1級の難易度
最初に、漢検1級の難易度について触れておきます。
漢検とは、日本の漢字の知識を問う検定試験です。漢字の読みや熟語の意味、書き取り、四字熟語や故事成語、当て字などの知識が問われます。日本で作られた字である国字も対象です。
1級はその中でも最難関の級です。私ぐらいの世代だと、2009年に宮崎美子さんがテレビ番組「Qさま!」の企画で合格されたのを覚えている方もいるかもしれませんね。
私の感覚としては、準1級とは比べ物にならないくらい難しい試験なのですが、主観的な印象なので難易度感は人によって異なるかもしれません。
客観的な情報としては、合格率 6~12%、試験範囲約6000字です。
まず、合格率について。6~12%というのは、気象予報士試験や公認会計士試験と同等か、それらよりやや高めです。
しかし、漢検1級の受験者のおそらくほとんどが漢検準1級に合格している人であり、仕事に役立つ試験でもありません。そのため、1級に挑戦する人のほとんどが既に漢字知識の多い漢字マニアであるという点に注意が必要です。
また、漢検1級には「リピーター」と呼ばれる、何度も合格を繰り返す人がそこそこいますが、合格率にはリピーターの方の合格も含まれるという点も重要です。
例えば、QuizKnockの昔の動画に出演している小林逸人さんは1級に数十回合格されていますが、この方の他にもリピーターはたくさんいらっしゃいます。小林さんは今も合格されています。
つまり、「まだ合格したことが無い人の合格率」だと、公表値より低くなりますが、どれくらいになるかは不明です。だれか集計してないかな。
続いて、試験範囲ですが、約6000字です。多い。
漢検2級の範囲が、中学校までに習う常用漢字が2136字で、準1級になるとそこに900字ほど追加されて約3000字となります。
そして1級になると、そこから3000字ほど追加されて、約6000字になります。追加量おかしくない?
常用漢字をすべて学び、さらにマイナーな漢字を900字覚えた後に、「あなたが人生で勉強した漢字と同じ数の難しい漢字を覚えてね」って言われるんですよ。
ただし、3000字すべてを覚える必要があるわけではなく、この中にも試験に出やすい漢字と出にくい漢字があります。(出たこと無い漢字もたくさんあります)。そのため、実際に新たに覚える漢字はもっと少ないです。(このあたり、ちゃんと集計したいなと思っていますが、まだできてないです)
しかし一方で、1級配当の3000字だけを勉強すれば良いというわけではなく、常用漢字を使った難しい言葉も勉強する必要があります。
例えば、「愛日」の対義語の「いじつ」を書いてね、とか「累わす」を読んでね、とかが出ます。(それぞれ「畏日」と「わずら-わす」)
「試験に出にくい1級配当漢字」と「試験に出る常用漢字知識」を差し引きするとだいたいトントンになって約2000~3000字を新たに勉強するぐらいになるんじゃないかな~なんて思っています。
これで伝わったか分かりませんが、それぐらいの難易度です。
合格体験記
自己紹介:理系大学院卒の社会人(27歳)です。
昔から「Qさま!」や「ネプリーグ」等のクイズ番組の漢字問題が好きだったのもあり、大学院生の頃に漢検準1級を受験しました。
きっかけはツイッターのアンケートだったのですが、準1級の受験に関しては過去記事を参照してください→漢検準一級を受けました
割と入念に勉強して挑んだおかげで、準1級は一発合格ができました。
準1級に合格したときに1級についても調べましたが、あまりの難易度の高さにビビり、人生で一度は合格してみたいな~、ぐらいに思う程度でした。1回分の過去問がこちらのページで公開されているので、興味あれば見てみてください。
その後、就職を機に関東へ転居し、入社日までの暇つぶしとして1級の勉強をのんびり始めることにしました。その頃になにをやっていたかは忘れましたが、新星出版社の頻出度順と公式の精選演習をやっていたと思います。これが2020年3月のこと。
具体的にいつまでに合格したいというような目標は立てずにダラダラと勉強していましたが(そして半年ぐらいサボり期間がありますが)、色々なきっかけがあって真面目に勉強することにしました。これが勉強開始から1年後、2021年3月くらいでしょうか。
きっかけについては謝辞で書きます。
真面目に勉強しているうちに知識が増え、2021年9月ごろに「来年度中に合格したい」と思うようになりました。
まだです!というか次回受ける予定も無いです!
来年度内くらいに合格できるレベルになっていたい……!#マシュマロを投げ合おうhttps://t.co/xjq0lBwFit pic.twitter.com/AVowYiR7k0— ふるやん (@furuya1223) September 12, 2021
そして、来年度=令和4年度が来る前に、前哨戦として令和3年度第3回(2022/02/13)の漢検1級を受けました。結果は142点。前哨戦としては悪くない点数でした。
漢検1級は200点満点の試験で、合格するにはその8割の160点が必要になります。
あと18点と聞くと「もうすぐ合格」と思われるかもしれませんが、140点台から上は少し点数を上げるのも非常に大変です。
雑に言うと新たに熟語を2000個覚えても点数は6点ぐらいしか上がらなかったりします。というか、これ以降の受験のたびに大体2000語くらい新しい言葉を勉強しているような気がします。そして毎回6点ぐらい上がっています。
いよいよ目標の令和4年度。前回の試験で点数が低かった部分を強化するための勉強を繰り返し、148点、153点と、順調に点数を伸ばしていけました。
私は今までいろんな検定試験を受けてきましたが、どれも「合格できそう」という状態でしか受験していませんでした。しかし、漢検1級はあまりにも難しすぎるので、それでは合格が難しいと思いました。
合格できないレベルでも受験することで、完全新作の本試験で自分の弱点を知ることができたのは、勉強の指針として役立ったと思います。
令和4年度の第1回、第2回ともに不合格となり、目標達成には残すところあと1回となりました。
期限の目標を立てると、勉強に気合が入るというメリットがある一方で、プレッシャーになるというデメリットもありますね。痛感しました。
しかも今回、勉強&リズムゲームのために iPad pro が欲しいという気持ちが2022年12月頃から高まっており、「合格したら自分へのご褒美として iPad pro 買うぞ~」と考えていました。これは本当に良くないです。
「今回で絶対合格するぞ」とか「合格したら〇〇しよう」とか考えると、試験直前期に「合格できなかったら……」と考えておかしな精神状態になるかもしれないのでやめましょう。私は金曜日の夜が結構辛かったです。
金曜日の夜に辛い精神状態になったので、「不合格でも iPad pro は買うぞ」と心に決めました。これで少し気が楽になりました。どんだけ iPad pro 欲しいんだ。
試験前の数日間は、YouTubeで配信を見ながら深夜2時~3時くらいまで勉強していましたが、前日の土曜日は早く寝ました。ちゃんと寝るためにスギ薬局の「カリスミン」という、ドリエルと同じ睡眠改善薬を飲みました。睡眠に失敗できないときはいつも薬に頼ってる。
そして待ちに待った(?)試験当日。適度な時間に起きて、いくつかの資料に目を通し、出発。会場近くのマクドナルドでいつものサムライマック「炙り醤油風 ダブル肉厚ビーフ」のセットを食べて会場に向かいました。漢検当日は、このマクドナルドで漢検の資料を開いている人が何人かいるのが好きです。お互い頑張ろうな。
会場に入って試験開始。私は前から解くタイプなので、いつも通りオモテ面の大問1から。ただし、語選択と対義語・類義語はじっくり考えると解けたりするので、一周目はパッと見で解ける部分だけ。
一周して、対義語・類義語をじっくり考えて解く。語選択も考えて解く。見直しつつ、自分の答えを問題用紙にメモしていきます。
この時点で、合格に達しているかの手応えが微妙だったので、点数を計算してみました。自信のある問題は正解、適当に埋めたところは不正解、自信の無い読み問題は半分正解として計算すると、158点でした。あと2点で合格ライン!
その後、3問解けていない四字熟語の問題の1つを思いつき、とりあえず合格ライン到達。とはいえ雑な計算に基づいているので、他の空欄も必死に考えて埋めます。全部埋めました。
合格できててもできてなくてもおかしくない手応えで終わりました。
試験が終わり、帰宅すると、数日我慢してたスプラトゥーン3で遊びました。Xマッチ楽しい。
しばらく遊んでいると、漢検1級模擬試験倉庫さんで解答速報が公開されたので、恐る恐る自己採点をしました。結果は163点。合格です。
しかし、漢検では自分が気づいていない漢字の書き間違い(横画が一本足りないとか)があり得るので、まだ完全に安心はできません。とはいえ、過去には自己採点から1点下がったことしかなかったですし、解答速報に無い読みが認められて点数が増えるケースもあるので、それなりの確度で合格と言えそうです。
iPad pro をポチりました。「合格しなくても買うぞ」と決めていたのですが、実は「合格したら容量がもう1段階多いやつにしようかな」なんて考えていました。値段が高すぎて諦めましたが。
しばらく「合格(仮)」の状態で過ごしていましたが、3月9日、大阪大学の合格発表と同じ日に合格発表がありました。結果は合格。安堵しました。これでもうプレッシャーを感じることなくのびのびと勉強できる。
そんな感じです。合格できてよかった。
合格したことによって、ツイッターの漢検界隈の方々と引け目無く交流することができるようになった気がします。もちろん私よりも漢字の知識をたくさん持つ方が多いですが、なんとなく「1級合格者どうし」みたいな仲間意識を勝手に感じているのかもしれません。
過去最大級に「成し遂げた感」を感じられたのも良かったです。
今回で合格できましたが、次回は170点以上での合格を目指して受験します。まだまだ勉強することはたくさんありますし、数万もの言葉から130問だけが出題される試験なので、1回の合格ではマスターした気持ちになれないんですよね。せめて2回は合格したい。
次回までは「過去問」と「訓読み」に力を入れます。それと、これまでまともに対策してこなかった「常用漢字だけの四字熟語」もやります。
漢検1級は役に立つのか
私は完全に趣味で漢検を受けているのですが、漢検1級が完全にマニア用検定かというとそうではなく、たまーに役立つ場面があります。
少し古い小説や難しめの小説だけでなく、凝ったシナリオのあるゲームやマーダーミステリーのテキストを読む時にも役立ったりします。
忸怩、暗渠、陥穽、睥睨、檣楼、猖獗などはゲームで見たことがあります。もちろん、これらは漢検1級の語彙の中だと簡単な部類ですが。
また、博物館や水族館、資料館などに行ったときに、説明書きに1級語彙が使われている場面も多々ありました。サンゴ礁に関する説明にある「堡礁」とか。化学系の文脈でミョウバンの「礬」の字があると「ミョウバンと関係ありそうだな」と分かったり。
生物・歴史・文学あたりのジャンルだと多いですね。専門用語は常用漢字外の字が書き換えられずに使われていることが多々あります。今の漢検では旧字体が出題されませんが、旧字体も歴史的な資料でよく見ますね。
また、歴史的な資料だと国名の漢字表記を見ることもあります。最近、「諾威(ノルウェー)」を見ました。
さらに、漢検の勉強の中で広がる知識もあります。
例えば、少し前の国立科学博物館の「毒」展で、白粉に鉛が使われていた話がありましたが、そこで私は「鉛黛」や「鉛華」など、白粉に関する言葉に「鉛」が使われていることを思い出していました。漢字の知識から昔の文化に触れられるのが楽しいです。
漢検の勉強をしているとなぜか(?)植物の名前にも詳しくなります。そのため、植物園に行くと「これが満天星(ドウダンツツジ)か~」のように、名前だけ知っていた植物の実体を見ることができて面白いです。街中を歩いていても、「六月雪(はくちょうげ)」や「冬青(そよご)」など色々見かけます。たいていカタカナで書かれているので、漢字が読めて嬉しいというより、名前を知っているだけで少し解像度が上がるのが楽しいという感じですね。
漢検の語彙には仏教用語もたくさんあるので、寺社仏閣に行くのも楽しくなりそうです。私はあまり行ったことが無いのですが、たまに行く際には説明書きに知ってる言葉を見つけて楽しくなります。
そういえば、最近「Arcaea」という音ゲーにハマっているのですが、ある方のArcaea配信で、メインストーリーを読む場面で「漢検」「日本語検定」というコメントがあって面白かったです。1級語彙はそんなに多くは無いですが、Arcaeaのストーリーは実際かなり難解ですね。難解な文章も物怖じせずに読もうと思えるのも1級取得のメリットでしょうか。
音ゲーといえば、私はプロセカもやっているのですが、プロセカに入っているOrangestarさんの『霽れを待つ』という曲、タイトルの「霽」が1級配当ですね。「光風霽月」の。
こんな感じで、意外と日常で漢検1級知識が活きる場面があって楽しいです。
お金になるわけではないですが、日常が豊かになります。
謝辞
今回、漢検1級に合格しましたが、これは自分だけの力で達成したのではなく、多くの人の影響があったおかげでてきたことです。
実は、漢検1級の勉強をしばらくサボっていたときに、真面目に勉強しようと思ったきっかけはVTuberの高井茅乃さんだったりします。
高井さんが漢検準1級に合格されて、1級を目指すと言っていたときに「自分より後に準1級に合格した人に1級合格を追い抜かれるのはなんか癪だな」というしょうもないプライドが発動して、真面目に勉強しようと思いました。本人にそのつもりは無いと思いますが、ありがとうございました。過酷な夕飯生活お疲れ様です。
漢検1級の勉強は終わりが見えなくて大変ですが、その中でモチベーションを保つことができたのは楸さんといたりぃさんが主催されている漢オタラジオのおかげです。こちらの配信は、ゲストを招いて漢検1級や漢字に関する様々な話題についてお話する配信です。
1級の勉強の序盤では出演者さんやチャット欄の方々の発言がほとんど理解できませんでしたが「もっと勉強してこの話題についていけるようになりたい」と思って勉強していました。勉強が進むに連れて、話が理解できるようになってくるのがとても楽しかったです。漢オタラジオに育ててもらったと言っても過言ではありません。ありがとうございます。ゲスト出演された方もありがとうございます。
ちなみに初めてリアタイで見た配信は以下の配信ですが、1級範囲は一問しか分かりませんでした。懐かしい。
漢検1級の勉強の中で、有志の方が作成してネット上に公開してくださっている沢山の資料を活用しました。
特に、spaceplusさんの漢検1級模擬試験倉庫の資料と、はぐんさんの漢字逞筆の資料を非常によく活用しました。この2サイトが無ければ合格できてません。本当にありがとうございます。
他にも、インスピさんやRubisCOさん、ひでまろさんなど、様々な方が作られた資料や出題ツイートで勉強しました。ありがとうございます。自分も何か、チャレンジャーに貢献できることをしたいですね。
資料以外にも、709infoさんの難読漢字検定やあびさんのYouTube動画、きくりんさんのYouTube動画(特に1級四字熟語!)でも楽しく勉強していました。面白くてためになるコンテンツの作成、ありがとうございます。
最後に、日本漢字能力検定協会さん、楽しい試験を開催していただいてありがとうございます。今後もお世話になります。
おわりに
今回の記事では漢検1級の合格体験記とその他もろもろのお話を書きました。
漢検1級合格は将来の夢と言っても良いようなものだったので、達成できて非常に嬉しいです。
次回の記事では、漢検1級に初合格するための勉強法を紹介しようと思っています。あくまで初合格したばかりの個人の考えですが、興味のある方は見ていただけると嬉しいです。